フレンチ・タッチとは? 90年代フランスのハウスと「フィルター・ディスコ」の正体

フレンチ・タッチは、90年代のフランスの作り手が生んだハウスのスタイル。特徴はテンポではなく手法にある——70年代末〜80年代初頭のディスコを数小節ループさせ、そこにレゾナンスの効いたフィルターをかけて開閉させる。フレンチハウス、フィルターハウス、テックファンクとも呼ばれ、BPMは110〜130の4つ打ちが中心だ。
| フレンチ・タッチ | |
|---|---|
| 発祥 | フランス/90年代前半〜半ば(商業的成功は1997年) |
| 別名 | フレンチハウス、フィルターハウス、tekfunk |
| BPM | 110〜130、4/4の4つ打ち |
| 音の核 | ディスコのループにかけるフィルター/フェイザー |
| 重要作 | Motorbass『Pansoul』(1996)/Daft Punk『Homework』(1997)/Cassius「1999」・Stardust「Music Sounds Better with You」(1998) |
| ルーツ | ディスコ、ユーロディスコ、スペースディスコ、ハウス |
「手法の名前」であること
ハウスのサブジャンルはたいていドラムパターンかテンポで名前がつく。フレンチ・タッチだけはスタジオでの操作が名前になっている。
ディスコのレコードから4小節を切り出す。ストリングス、ギターのカッティング、ボーカルの一節。それをループさせ、レゾナンス付きのフィルターを横断させると、高域が消えてまた戻ってくる。フェイザーを足せばループ全体が揺れる。ループ自体は何も変わらず、フィルターだけが編曲をしている。この一点が「フィルターハウス」という別名の由来だ。
元ネタが実際のディスコなので、和音の層はその後のジャンルより厚い。ミニマルな曲が「引き算」で盛り上げるのに対し、フレンチ・タッチは最初からフルバンドが鳴っているものを隠し、また見せる。ドロップは新しい音が入る瞬間ではなく、フィルターが開く瞬間になる。
どこから来たか
最初期の実験は90年代半ばに出回り、英国のダンス系メディアが早くから反応した。ただし商業的な突破は1997年まで待つことになる。音として固まった瞬間として挙げられるのが Motorbass『Pansoul』(1996)、もう一つの推進力が Thomas Bangalter のレーベル Roulé だった。
そして1997〜98年。Daft Punk『Homework』が英アルバムチャートのトップ10に入り、翌年の夏にはダンスミュージックの外側まで届いた2曲が出る——Cassius「1999」 と Stardust「Music Sounds Better with You」(Roulé)。後者は今もハウス史上もっとも知られた1曲であり続けている。
その後 Air、Modjo、Bob Sinclar、The Supermen Lovers と裾野が広がり、2005年には Madonna『Confessions on a Dance Floor』にもその影響が聴き取れるようになった。
現場での聴き分け方
- ベースとドラムは動かないのに、その上の音色だけがずっと動いている
- ループが現代的な編曲より明らかに長く回る。変化は新しいパートではなくフィルターから来る
- どこかで聴いた気がするボーカルや弦のフレーズが出てくる(実際にディスコからの引用であることが多い)
- テックハウスやテクノより遅く、押しの強さより温度感で聴かせる
隣接ジャンルとの違い
- ディスコ系ハウス全般との違い:ディスコをサンプリングするハウスは山ほどある。フレンチ・タッチはそのサンプルをどう加工するかが主題で、フィルターの動きが作曲そのものになっている。
- ディープハウスとの違い:ディープハウスはコードと余白で温度を作る。フレンチ・タッチは録音物そのものから温度を借りてくる。
- テックハウスとの違い:テックハウスは速くドライでドラム主導。フレンチ・タッチは遅く、和声的に密度が高い。
- バレアリックとの違い:どちらも温かくミドルテンポだが、バレアリックはジャンル横断の選曲の態度、フレンチ・タッチは制作の手法を指す。
いま聴くなら
この音はフランスのクラブから消えたことがない(→パリのハウスクラブ)。フィルターを効かせたディスコ・エディットは、今も世界中のフェスの序盤で定番として鳴っている。系統図の全体はハウスのジャンル早見ガイドとハウスミュージックの歴史から。
よくある質問
- フレンチ・タッチとは何ですか?
- 90年代のフランスの作り手が生んだハウスのスタイルです。70年代末〜80年代初頭のディスコをループし、フィルターやフェイザーで加工するのが特徴で、フレンチハウス、フィルターハウス、tekfunkとも呼ばれます。
- フレンチ・タッチのBPMはどれくらいですか?
- 多くは4/4の4つ打ちで、110〜130BPMの範囲に収まります。テックハウスやテクノより遅く、押しの強さより温度感で聴かせるテンポ帯です。
- なぜ「フィルターハウス」とも呼ばれるのですか?
- フィルターの開閉が編曲そのものだからです。ディスコのループは変わらないまま、レゾナンス付きフィルターが横断することで盛り上がりと引きが作られ、新しいパートを足さずに展開が生まれます。
- フレンチ・タッチの代表曲は何ですか?
- Motorbass『Pansoul』(1996)とDaft Punk『Homework』(1997)が音を確立し、1998年夏にCassius「1999」とRoulé からのStardust「Music Sounds Better with You」という2曲の世界的ヒットが生まれました。
- フレンチ・タッチとフレンチハウスは違いますか?
- 同じジャンルの別名です。フィルターハウス、tekfunkも同様。「フレンチ・タッチ」は90年代〜2000年代初頭の全盛期を指して使われることが多く、「フレンチハウス」はより広い総称として使われます。